by Jane Feather from Bantam Books
舞台はナポレオン戦争時代の英国及びポルトガル。 ストーンリッジ伯爵家の男子が絶え、家督はベルモント一族から代々対立していた傍系のギルブレイス一族に渡った。その当主シルベスターは先代伯爵の遺言を聞かされ、信じられなかった。先代の息子で父親より先に亡くなったベルモント子爵の四人の娘の内から一人妻を迎えなければ、屋敷以外の財産全てはベルモント子爵未亡人とその遺児達が相続することになると。 シルベスターはかつて竜騎兵団を率いる隊長だった。数年前、ポルトガルで一団はフランス軍によって壊滅され、自らも深手を負って捕虜となり、やがて解放されたものの、英国軍の中では彼が敵の大軍に怖じ気づき、戦わずして降伏し、陣を失ったという噂が流れていて、怪我で当時の記憶を失っていた彼には潔白を示す術はなかった。ウェリントン公の弁護により辛うじて救われた彼だが、周囲の冷たい態度に堪えられず軍を去った。伯爵家の家督相続は彼にとって新たなる再出発となるはずだった。収入源のない屋敷だけを相続しても、屋敷の維持に苦労するだけ。不承不承に、彼は子爵の遺児から妻を選ぶことにした。 相続すべき屋敷へ向かったシルベスターは伯爵家の領地の川で魚と戯れるジプシー娘と出会い、誘惑しようとしてひどい反撃を受けるが、よもやこのジプシー娘が子爵の遺児の三女、テオドラだとは知らず、屋敷で再会した二人は愕然とする。子爵未亡人の薦めもあってテオを妻にすると決心したシルベスターは彼女を口説こうとするが、先代の息子のように振る舞っていたテオには祖父の死やシルベスターの相続が認められず反抗を続ける。彼女の内の情熱を引き出すことによって彼は辛うじて彼女を妻に迎えることに成功する。 けれども、弁護士とシルベスターの会話を盗み聞きして祖父の出した条件を知った彼女は怒ってしまい、シルベスターの弁護を聞き入れようとはしなかった。 一方、結婚の前後からシルベスターは何ものかに命を狙われていて、それはどうもポルトガルでの事件に関係するものらしかった・・・
ジェーン・フェザーは摂政時代物をよく書いていますが、ヨーロッパ(大陸)を舞台にしたものなども書いています。彼女の作品でよく書いているピノ・ダンジェリコのイラストの影響か、どこかセンシャルで危険な雰囲気が醸し出されるようですが、誤解を克服して互いを理解していくという、ロマンスの心髄ともいえる部分の描写が上手いです。この作品では身も心も深く傷を負った兵士の夫をテオが理解し、彼を過去から解放しようとする過程にぐいぐいと引き込まれていきます。ヒロインの境遇は女盗賊やDV亭主に苦しめられる妻とか様々で、設定柄ちょっと苦手なものもありますが、全体的にテンポ良い書きっぷりです。 |