by Kat Martin from St.Martin
舞台はトラファルガー開戦前夜、摂政時代の英国 ジェシーことジェシカ・フォックスはベルモア侯爵家の領地の近くのブラック・ボア・インという宿の娼婦の娘として生まれ、幼い頃からスリを生業にしてた。十二歳の娘は侯爵家の次男で海軍将校になったばかりのマシューことマットに悪戯することを楽しんでいたが、ある日ひどいしっぺ返しをくらい、「いつか素敵なレディになって後悔させてやる」と泣きながら宣言した。 それから7年後、長兄が亡くなり今やストリックランド伯爵となっているマットは故郷のベルモア・ホールに帰ってきた。彼が海にいる間にベルモア侯爵は息子を失った悲しみを和らげてくれたジェシーを引き取り、レディとしての教育を授け、娘同然に可愛がっていた。マットはジェシーの野心を知っていて、父親の行為に賛成していなかったが、どうすることもできなかった。確かに、ジェシーは無心にベルモア侯爵に近付いたわけではなかったが、そうしなければ、彼女には泥棒として捉えられるか、娼婦になる道しか残されていなかったのだ。しかし、今では侯爵を父親のように愛し、ベルモア家に忠誠を誓っていた。そして、マットにあこがれを抱くようになっていた。 侯爵はマットとジェシーが結婚することを望むが、マットは素性の知れない娘と結婚するつもりは無く、隣接の領地のレディと結婚するのだと父親に宣言する。一方で、美しく成長し、領地の子供達に学校を開くジェシーにマットは惹かれていく。侯爵は自分が死ねばジェシーが心細い立場になるといって、社交界にデビューさせて夫を見つけることとする。早速彼女は沢山の求婚者を得、特に、ミルトン公爵は熱心で、マットは彼女のへの強い執着に抗って、彼との結婚を勧める。しかしある舞踏会の夜、屋敷で火事が起こり、マットの身が危ないと知ったジェシーは夢中になって彼を救出に行く。火の中で出会った二人は無事に逃げ出し、助け出されるまでの間、木陰に隠れていたが、情熱は自制を失い、一線を越えそうになるまで抱擁を交わすのだった。 その後、逃げるように海に出たマットだったが、気持ちを整理し、ジェシーを妻にする事を決心し、父親に手紙を出そうとしたが、それに先んじて父親からジェシーとミルトン公爵の結婚式に出席するようにとの手紙が彼の元に届けられ・・・・
キャット・マーティンは紹介したことがあるでしょうか?J・リンゼイなどの大御所には及ばないかも知れませんが、私の評価では完成度が高く、人気の作家さんのひとりです。主にリージェンシーとクリオール系の物語を描いています。大河ドラマではありません。ヒーローがしつこいほど疑り深いのが癖ですが、まあ、これは結構ロマンスには見られる現象なので、大目に見てあげて、クライマックスがなかなか憎い盛り上がりを見せてくれて、読む者を楽しませてくれる作風です。 |